年間数十組のお客様の住宅購入に関する相談に乗っています。たけです。
今回は住宅ローンを返済していく上でお金に余裕があるときに繰り上げ返済した方が良いのか、しない方が良いのか悩まれる方もいると思うので、そういった方向けの記事になります。
長期間にわたって返済していく住宅ローン、毎月の支払額を減らしたり、現役中に返済してしまうためにも、繰り上げ返済をうまく利用して返済できたら老後も楽ですよね!?
そんな繰り上げ返済について考えていきたいと思います。
この記事を読めば繰り上げ返済におけるメリット・デメリット。また繰り上げ返済するにあたっての注意点について理解してもらえます。
繰り上げ返済の方法と結論
結論から言うと繰り上げ返済はメリットになることの方が多いので、出来るならお勧めしています。
なので、繰り上げ返済する場合の注意点について解説していきます。
注意点をしっかり理解し、プラスになるはずの繰り上げ返済がマイナスに作用しないように気を付けていきましょう。
まず繰り上げ返済には二通り方法があります。
一つは繰り上げ返済した分で支払期間を短くする「期間短縮型」。
もう一つは月々の支払額を少なくする、「返済額軽減型」。
この二種類があります。
期間短縮型の方が受けられるメリットが大きいので、期間短縮型を利用する人が多いです。
私自身も期間短縮型の繰り上げ返済をお勧めします。
この二つについて解説する前に、繰り上げ返済のメリットについて見ていきましょう。
繰り上げ返済するメリット
繰り上げ返済をするメリットは以下の通りです。
1、期間短縮型の場合住宅ローンの償還期間が短くなり、早く住宅ローンを払い終えられる。
2、ローンの総利息支払い額が減る。
3、支払額軽減型の場合毎月の支払額が減る。
繰り上げ返済はできるだけ早いうちにした方が、受けられるメリットは大きくなります。
理由は繰り上げ返済した分は全て元本に充てられるからです。
元本が大きいうちに繰り上げ返済した方が、小さな元本にかかる利息軽減効果より、大きな元本にかかる利息の軽減効果の方が大きいからです。
そのため利息の軽減効果も大きくなるし、期間短縮の効果も大きくなります。
繰り上げ返済することで支払期間が短縮され、定年退職前にローンを完済出来たり、余分な利息を払わずに済めば、老後への不安も少しは解消できそうですね。
期間短縮型と支払額軽減型をシミュレーションしてみた
ということで実際にどのくらい差が出るのかシミュレーションしてみました。
借入額4000万円をいろいろな方法で繰り上げ返済のシミュレーションをしてみます。
借り入れから1年後に100万円返済
‣支払期間1年短縮
‣利息軽減効果308,370円
借り入れから20年後に100万円返済
‣支払期間10ヶ月短縮
‣利息軽減効果120,555円
借り入れから1年後に100万円支払額軽減型で繰り上げ返済した場合
‣月々の支払額2,800円減
‣利息軽減効果142,510円
このように早い時期に期間短縮型で返済した方が、総利息支払い額が減らせる効果が大きいということが分かっていただけたと思います。
繰り上げ返済する場合のデメリットは、手元の資金が減るということです。
この手元の資金が減るということなのですが、とても大事なことで繰り上げ返済する場合の注意点で重要になってくるので覚えておいてください。
支払額軽減型を利用するのはどんな人
上のシミュレーションからもわかる通り、期間短縮型の方が得られる利益が多いため、期間短縮型の繰り上げ返済を利用する人の方が圧倒的に多いです。
では支払額軽減型を利用する方がよい人は一体どんな人なのでしょう?
それはズバリ毎月の支払額を減らしたい人です!
って当たり前すぎましたね…
毎月の支払額を減らしたい人というのは、今後近い将来毎月多額の出費が分かっている人ということです。
どういった人かというと、子供が進学のためお金がかかるとか、転職により収入が減ることが分かっている人などです。
こういった人は、人生のお金がかかる時期の住宅ローンの支払いを減らすことによって、無理なく住宅ローンの支払いを行っていくことが出来るようになります。
自分のライフイベントをしっかり把握して、ライフプランを考え、自分に合った繰り上げ返済の種類を選んでいただけたらと思います。
繰り上げ返済する場合の注意点
繰り上げ返済する場合に、考えておかなければならない注意点について解説していきます。
繰り上げ返済する場合に注意が必要なことは以下の二点です。
1、繰り上げ返済手数料に注意
2、繰り上げ返済する場合は時期に注意
繰り上げ返済手数料について
繰り上げ返済する場合には手数料が取られます。
金額は金融機関によって異なりますが、数万円程度かかってきます。繰り上げ返済しなければかからない余計な手数料です。
利息軽減効果から差し引いて利益になるか計算しましょう。
また金額にも制限があり、100万円から繰り上げ返済可能としている金融機関も多いので確認しましょう。
以上のような注意点はネットバンキングを利用することで解消できます。
ネットからの申し込みなら手数料無料の金融機関も多いですし、返済額も10万円からとなる金融機関も多いです。ネットを利用してうまく返済していきましょう。
わざわざ窓口の営業中に銀行に行く必要もないですし、日中忙しい人も時間を気にすることなくネットから返済が出来ます。
繰り上げ返済する時期に注意
繰り上げ返済は早い時期に行った方が軽減効果が大きいという話をしましたが、ただ闇雲に繰り上げ返済すればよいというものではありません。
繰り上げ返済する場合にはライフプランを考えた返済計画と、軽減税率を考えた返済を組み合わせて考える必要があります。
軽減税率を考えた繰り上げ返済計画
繰り上げ返済を行う場合、ローンを組んでから10年以内に返済する場合は注意が必要です。
住宅ローンを組んで住宅を取得した人の多くは、住宅ローン減税を利用していると思います。
この住宅ローン減税の対象の中に、償還期間が10年以上というものがあります。
期間短縮型の繰り上げ返済を行うことで、償還期間が10年よりも短くなってしますと住宅ローン減税の対象から外れてしまいます。
また住宅ローン減税の計算式は年末の住宅ローン残高×1%なので、繰り上げ返済したことでローン残高が減ると帰ってくる税金が減ります。そのあたりも利息軽減効果と軽減税効果どちらが得か計算して繰り上げ返済する必要があります。
住宅ローン減税の期間が終了した11年目以降に繰り上げ返済する方が、軽減税措置も最大限受けられ繰り上げ返済による利息軽減効果も最大限利用できると考えられます。
ライフプランを考えた返済時期
人生において、子供が小学生時期がお金がたまりやすい時期と言われています。
軽減税の効果も考えて住宅ローン減税が終わった11年目、子供がまだ小さいうちに、手元の資金を住宅ローンの返済に充ててしまうと、その後来るライフイベントに対応できなくなってします可能性が出てきます。
早い住宅ローンの繰り上げ返済は、利息軽減効果が大きいですが、繰り上げ返済のデメリットでも触れましたが手元の資金が無くなってしまいます。
その後来る子供の大学進学に備えてお金を準備しておく必要があります。
手元の資金がないため子供の進学に合わせて、新たに教育ローンを組んでは折角の利息軽減効果が台無しです。
奨学金ならまだしも、金融機関の教育ローンの金利はだいたい3~4%ほどです。
せっかく低い金利で借りている住宅ローンなのに、高い金利で借り直してしまっては意味がありません。
将来来る子供の進学などに備え、必要なお金は残しておきましょう。
また子供の進学だけではなく、人生何が起こるか分かりません。病気やけがなどで急に働けなくなる場合も想定されます。
いざそうなったときに生活が困窮しないためにも、最低限の生活防衛資金は残しつつ、余ったお金で繰り上げ返済していくようにしましょう。
賢い住宅ローンの組み方と繰り上げ返済方法
私の考える住宅ローンの組み方と、賢い繰り上げ返済方法について触れておきます。
まず住宅ローンですができるだけ長い期間で借りた方が良いです。
理由は現在は金利がとても低いからです。
支払期間を長くすることで月々の支払額を少なくすることが出来ます。
そうすることで日々の生活に余裕を持たせ、子供が小さくお金のかからない時期に将来に向けて貯蓄していきます。
そして末子が社会人になって巣立ったあと、二十数年後、何回かに分けて期間短縮型の繰り上げ返済をしていきます。
いっぺんに手元のお金を全て繰り上げ返済に充てるようなことはしません。有事の際にも対応できるように生活防衛資金は残しつつ、余剰金で繰り上げ返済していきます。
そうすれば償還期間も短くでき、老後の支払いも抑えつつ、利息の軽減効果も受けることが出来ます。
余談、繰り上げ返済しない方がお得!?
ここはあくまでも余談なので読み飛ばしてもらっても構いません。
関係ないと思う人は参考にしないでください。
ここで私が話したいのは住宅ローンの金利と投資によるリターンについてです。
現在住宅ローンの金利はとても低いとお話ししました。変動金利においては0.5%を切る商品もあります。
その金利を上回る金融商品で運用できれば、利息分を上回ることが出来るのではないかということです。
保険商品やインデックス投資で、年利3%くらいで運用できる商品に投資するとします。
そこから得た利益で繰り上げ返済の利息軽減効果を上回れれば、繰り上げ返済しなくてもよいのではないかということです。
この場合取引手数料や、信託報酬のパーセンテージは後に大きな差になってくるので、証券会社は十分選びましょう。
また、流動性のある商品に投資しておくことも大事です。必要な時にすぐに換金できた方が、いざという時の使い勝手もいいです。
例えば住宅を購入した翌年に100万円を年利3%で運用するとすると、20年後には利息だけで60万円になります。実際は複利の計算があるのでもっと増えます。
最初にシミュレーションした、20年後に100万円繰り上げ返済した場合の利息軽減効果が12万円くらいなので、それに比べ48万円も多くなっています。
仮に最初のシミュレーションに当てはめて計算すると、20年で400万円貯めて、20年後に住宅ローンの繰り上げ返済に充てるとすると246,121円の利息軽減効果になります。
これを400万円を年利3%で運用すると1年で12万増え、2年で24万となりほぼ利息分の元は取れます。
しかも、この12万円は毎年続きます。
100万と言わず50万を20年運用しても30万円にはなるので、20年後に100万円返す利息軽減効果よりもおおきくなります。
年利3%というのは決して難しい数字ではないので、十分可能だと思います。
しかし、これはあくまでも運用が3%以上で継続した場合の話で仮設です。
投資にはリスクはつきものです。元本割れのリスクもありますし、引き出すタイミングで下落しないとも限りません。くれぐれもリスクとリターンを考えて自己責任でお願いします。
ちなみに私だったら投資と繰り上げ返済分と分けます。すべてを投資に回すわけではなく、両方の利益を得られるように考えて投資割合を決めていきます。
もちろん最低限の生活防衛資金を残したうえでですが。
この考えは住宅ローンの金利が低いから成り立つ考えです。
同じように奨学金の返還にも言えます。奨学金の利率も0.5%くらいなので繰り上げ返済するよりも、その分のお金で投資に回した方がリターンが大きくなる可能性が高くなります。
余談なのであくまでも参考程度に聞いてください。
最後に
住宅ローンの繰り上げ返済の考え方について参考にしていただけましたか。
当然人それぞれ状況や考えが違うので、一概にどれが正しいとは言えません。
家族構成や年齢によってリスクの取り方は様々です。
子供がいない若い夫婦の場合は、将来必要になる教育資金もまだ先ですし、病気になる可能性も低いです。少しリスクをとって早いうちに繰り上げ返済を利用した方が得かもしれません。
繰り上げ返済については、一人ひとり状況が違うのでそれぞれ専門家に相談する必要があります。
ファイナンシャルプランナーに相談したり、銀行やライフプランの相談に乗ってもらえる人に相談するのが良いかもしれません。
今回の記事も参考にしつつ、自分の考えをまとめてから専門家の意見を取り入れるようにしてください。